2017年5月12日掲載
インドネシア共和国 ジョコ・ウィドド大統領によるW-BRIDGE研究プロジェクトサイト(南カリマンタン州)の現地訪問(5月7日)
学校法人早稲田大学と株式会社ブリヂストン(以下ブリヂストン)でつくる研究支援枠組みであるW-BRIDGE (ダブルブリッヂ)が支援してきた「国有林内におけるゴムの木の植林による住民参加型森林管理プロジェクト」のサイトに、インドネシア共和国 ジョコ・ウィドド大統領が訪問されました。
本プロジェクトは、早稲田大学人間科学学術院の森川名誉教授を代表として、(公財)国際緑化推進センター、現地ランブン・マンクラット大学(南カリマンタン州)及びブリヂストンの現地法人ブリヂストン・カリマンタン・プランテーション(BSKP)社等と連携し、2012年以降5年間に渉り南カリマンタン州タナーラウト県において実施して参りました。
インドネシア国内で、本W-BRIDGEプロジェクトは「社会林業プログラム」の大いなる成功事例として、首都ジャカルタのインドネシア環境林業省にも認知され、既に2016年の9月にインドネシア環境林業大臣が現地を訪問なされています。今回、去る2017年5月7日に、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領の現地訪問が実現しました。
【ジョコ大統領及びシティ環境林業大臣から住民グループ代表者へ国有林使用許可証の贈呈】 |
これまでW-BRIDGEでは10年にわたる活動のなかで、日本を含む世界各国で、のべ130の環境団体及び大学への支援を通して、様々な調査、プロジェクトを行って参りました。その中でインドネシアでは、早稲田大学人間科学学術院の森川名誉教授を代表として、本邦民間組織であります(公財)国際緑化推進センター、現地ランブン・マンクラット大学(南カリマンタン州)及びブリヂストンの現地法人ブリヂストン・カリマンタン・プランテーション社等と連携し、2012年以降5年間にわたり南カリマンタン州タナーラウト県において、「国有林内におけるゴムの木の植林による住民参加型森林管理プロジェクト」を実施して参りました。
インドネシアは、世界第3位の熱帯雨林面積を誇り、希少動植物の宝庫とされている一方、森林火災や違法伐採などによる森林減少・劣化の防止及び森林周辺の住民の生活向上が喫緊の課題として認識されています。そこでインドネシア環境林業省では、それまでのトップダウン的な森林管理手法を改め、2015年以降正式に、国有林内における地元住民の森林利用権に配慮した「社会林業プログラム」を本格的に開始しました。この「社会林業プログラム」では、地域住民が森林を管理するグループを結成することで、国有林の使用権を得ることができます。これまで、インドネシアの国有林は主に大企業等に利用権が与えられていたことを考慮すると、地域住民を尊重した画期的な政策転換だと言えます。ただし、地域住民グループが国有林を持続的に管理するするためには、適切な収益事業の選定、初期費用の調達、適正技術及び組織運営が課題とされていました。
【植林プロジェクトの開始と5年後の姿】 |
本W-BRIDGEプロジェクトでは、地域住民グループ(約60世帯)が国有林のうち、伐採が禁止されている保安林内において土地使用権を得て、主にゴムの木を約57haに植林しました。地域住民はゴムの木を伐採せずとも、ゴム樹液を収穫することができるので、植林したゴムの木を保全しつつ安定した収入が得られます。また、本プロジェクトにより、ゴムの木植林にかかる初期費用を支援するとともに、現地ブリヂストン・カリマンタン・プランテーション社が高品質のゴムの木苗木の無償提供及び栽培技術の指導を行いました。また地元のランブン・マンクラット大学が住民組織の運営方法を指導する等ファシリテーションを入念に行ったことで、「住民の環境保全意識の向上」及び「地域コミュニティの自助意識の強化」等が図られ、「社会林業プログラム」の持続性確保に成功した点が高く評価されています。
この1年以内にはゴムの木の樹液の収穫が可能となり、これまで不安定な日雇い労働に依存していた住民が国有林という土地及び資源の利用権を得て、生活が安定・向上する希望が見えて来ました。住民がゴムの木の栽培に従事することで、周辺の天然林も含めて森林火災の防止に成功したことで、野生動物の保全等の生物多様性の面でも大きな前進が図られています。また、ゴムの木に加えて、樹間を利用した陸稲の栽培、コーヒーの木、マンゴーなどの果実種、蜂蜜の蜜源樹種の植林なども実施されており、住民グループは生活の安定・向上のために、多角的な取り組みを進めています。
インドネシア国内で、本W-BRIDGEプロジェクトは「社会林業プログラム」の大いなる成功事例として、首都ジャカルタのインドネシア環境林業省にも認知され、既に2016年の9月にインドネシア環境林業大臣が現地を訪問なされています。今回、去る2017年5月7日に、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領の現地訪問が実現しました。ジョコ大統領は、本W-BRIDGEプロジェクトを政府が推進している「社会林業プログラム」の先進事例として高く評価し、プロジェクト開始当初から参加している農民グループのリーダーへ国有林の正式な土地使用許可書を手渡しました。今後、「社会林業プログラム」の参加農民グループへ、事業の初期費用としてインドネシア銀行からの融資支援も検討しており、インドネシア全国における更なる普及・拡大を期待なされました。
ジョコ大統領はインドネシアの名門ガジャ・マダ大学の林業学部卒で元々、林業経営や森林保全に関して専門的な知識を持っておられます。その大統領の目で本W-BRIDGEプロジェクトを実際に視察され、高い評価を得たことで、国全体の森林管理政策、ならびに日本との環境・森林分野での協力関係が大きく前進することが期待できます。
インドネシアにおける本W-BRIDGEプロジェクトの成功は、翻って日本企業のCSR活動の良きケーススタディとなります。特に、日本企業による海外森林保全活動、温室効果ガス削減のためのスキーム「森林の減少・劣化に起因するCO2排出の削減(REDD+)」及び二国間クレジット制度(JCM)などの炭素クレジット事業への関心を大いに高めることも期待されます。
【住民の副収入となる陸稲の豊作を祝うプロジェクトメンバー】 |